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東京地方裁判所 平成8年(行ウ)262号 判決

神奈川県鎌倉市西鎌倉三丁目九番一五号

原告

清野資正

東京都葛飾区立石八丁目三一番六号

被告

葛飾税務署長 澤田利成

右指定代理人

森悦子

渡辺進

市川幸次

寺島進一

三井広樹

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が、原告に対し、平成五年九月七日付けでした、被相続人清野貞子の相続に係る原告の相続税の更正の請求に対する更正すべき理由のない旨の通知処分を取り消す。

第二事案の概要等

一  事案の概要

本件は、被相続人清野貞子(以下「本件被相続人」という。)の共同相続人の一人である原告が、当該相続に係る相続税の法定申告期限後に成立した遺産分割調停によって原告が取得した財産に係る課税価格が民法の規定による相続分の割合によって計算されていた課税価格と異なることになったことを理由として、被告に対して、更正の請求をしたところ、被告が原告の右更正の請求は理由がない旨の通知(処分)をしたため、その取消しを求めるものである。

二  関係法令の規定

平成四年法律第一六号による改正前の相続税法(以下「法」という。)二七条一項は、被相続人から相続により財産を取得した物の課税価格に係る相続税額があるときは、その相続の開始があったことを知った日の翌日から六か月以内に課税価格及び相続税額等を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならないと規定する。その際、その申告書には、被相続人の死亡の時における財産及び債務、当該被相続人から相続により財産を取得したすべての者が相続により取得した財産又は小計した債務の各人ごとの明細書を添付しなければならない(同条三項)。なお、法五五条本文は、法定申告期限内に相続人間で遺産が分割されていない場合、その未分割の遺産については、各共同相続人が民法(民法九〇四条の二を除く。)の規定による相続分(以下「法定相続分」という。)の割合に従って、当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算することとしている。

そして、納税申告書を提出した者は、その申告書に記載した課税標準等又は税額等の計算が、国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があった場合には、当該更正後の税額。)が過大であるときには、法定申告期限から一年以内に限り、税務署長に対し、その課税標準等又は税額等につき更正の請求をすることができる(国税通則法(以下「通則法」という。)二三条一項各号列記以外の部分、同項一号)ほか、法定申告期限から一年を経過した後においても、通則法二三条二項各号に該当する場合には、いずれも当該理由が生じた日の翌日から起算して二か月以内に限り、更正の請求をすることが認められている。なお、この通則法二三条の規定による更正の請求は、法五五条の規定に従って申告書を提出した者に対しても適用される。

さらに、未分割財産につき法定相続分の割合に従って課税価格を計算した申告書を提出した者は、法定申告期限経過後に未分割財産の分割が行われ、当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分の割合に従って計算された課税価格と異なることとなり、その結果、当該申告に係る課税価格及び相続税額(当該申告書を提出した後更正があった場合には、当該更正に係る課税価格及び相続税額。)が過大となったときには、その分割に行われたことを知った日の翌日から四か月以内に限り、通則法二三条一項の規定による更正の請求をすることができる(法五五条ただし書、三二条各号列記以外の部分、同条一号)。なお、法三二条一号に規定する事由により、新たに相続税を納付すべきこととなる者については期限後申告(法三〇条)が、既に確定した相続税額が増大することとなる者については修正申告(法三一条一項)が、それぞれ認められている。

第三争いのない事実等

一  当事者等

平成元年四月一七日、本件被相続人が死亡し、原告(弟)、白井房代(姉)、清野正忠(兄。以下「正忠」という。)及び清野和代(妹。以下「和代」という。)の四名(以下、右四名を「本件共同相続人ら」と総称する。)が、本件被相続人の財産に属する権利義務を承継した。

二  本件共同相続人らに係る相続税の申告及び更正等の内容及び経緯は、別表のとおりであり、その詳細は以下のとおりである。

1  本件被相続人に係る相続により取得したとして当初申告された預貯金等の中には、三井銀行(現さくら銀行)小岩支店の定期預金八四四〇万円及び北海道拓殖銀行新小岩支店の定期預金九〇〇万円(以下両定期預金を「申告定期預金」と総称する。)が含まれていた。本件共同相続人らは、申告定期預金の名義を、本件被相続人から正忠に変更する依頼書を、三井銀行小岩支店に対しては平成元年五月一七日付けで、北海道拓殖銀行新小岩支店に対しては同年六月一日付けで、それぞれ提出した上、申告定期預金を、東洋エステート株式会社(以下「東洋エステート」という。)の三井銀行小岩支店からの借入金二億二六六〇万円の一部である八四四〇万円及び北海道拓殖銀行新小岩支店からの借入金九〇〇万円(合計九三四〇万円)の代位弁済金に充当した。

本件共同相続人らが、右のとおり代位弁済金に充当した申告定期預金の金額は、東洋エステートの昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までの事業年度及び平成二年一月一日から同年一二月三一日までの各事業年度の決算報告書において、本件被相続人からの短期借入金として計上された。(甲第一号証)

なお、東洋エステートの昭和六三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度の法人税の確定申告書の記載は債務超過の内容となっていた。

2  平成元年一〇月一三日、本件共同相続人ちは、被告に対して、相続税の法定申告期限内に遺産分割協議が整う見込みがなかったことから、法五五条の規定に基づき、算出した課税価格及び納付すべき相続税額を記載した申告書(以下「本件申告書」という。)を提出した。本件申告書には、本件被相続人からの相続財産として別表中「当初申告」欄記載〈1〉ないし〈8〉のとおりの財産並びに相続債務として一三七万七五九四円(同〈12〉、〈13〉。ただし、同〈12〉は公租公課のみ。)及び葬式費用として一六四万〇四〇一円(同〈14〉)が、それぞれ計上されていた。なお、申告定期預金の金額も相続財産中の預貯金等(同〈4〉)の金額に含まれていた。(甲第一号証、第三号証)

3  平成二年九月五日、本件共同相続人らは、被告に対し、別表中「修正申告」欄記載のとおり、東洋エステートからの未収給与一四二万七五五三円(同欄〈9〉)、同社に対する仮払金一五万円(同〈10〉)及び同者に対する未払金一一万四〇〇〇円(同〈12〉と別表中「当初申告」欄記載〈12〉との差額)がそれぞれ申告漏れであったとして、修正申告書を提出した(右申告を以下「本件修正申告」という。)。(甲第四号証)

4  原告を除く共同相続人三名(以下「他の共同相続人ら」という。)は、被告に対し、別表中「第1次更正の請求」欄記載のとおり、本件被相続人からの相続財産として申告した有限会社タイセイに係る出資金の評価額に誤りがあり、本件修正申告に係る納付すべき税額が過大であったとして、法定の期間内(法定申告期限から一年以内)である平成二年一〇月一七日、通則法二三条一項の規定に基づく更正の請求(以下「第一次更正請求」という。)を行った。なお、同年一二月一日付けで、第一次更正請求とは別に、東洋エステートに対する貸付金も過大に申告していたから、これについても更正(減額)をしてもらいたい旨の本件共同相続人ら名義の嘆願書が被告に提出された。

5  被告は、別表中「更正処分」欄記載のとおり、有限会社タイセイに係る出資金の評価額のうち二三三万六八四〇円及び東洋エステートに対する貸付金のうち重複計上であると認められた五〇〇万円の合計七三三万六八四〇円が過大に申告されているとして、平成三年一月三一日、本件修正申告に係る課税価格及び納付すべき税額を減額する更正を、他の共同相続人らに対して行うとともに、原告に対しても同様の更正を行った(以下「本件更正」という。)。(甲第一号証)

6  平成五年三月四日、申立人を原告、相手方を他の共同相続人らとする遺産分割調停申立事件(東京家庭裁判所平成二年(家イ)第二五三七号事件)において、東洋エステートに対する貸付金一億四二四〇万円が本件被相続人の遺産であることを確認し、以下のとおりの財産を原告が分割により取得する旨の内容を含む調停が成立した(甲第二号証。以下「本件調停」という。)。

(一) 和代からの代償金合計一五一四万八〇二一円

(二) 正忠からの代償金合計三九六万九〇四〇円

(三) 東洋エステートに対する貸付金一億四二四〇九万円の内金三五九九万四三八八円

(四) 相続債務一四九万一五九四円の内金三七万二八九八円

(五) 葬式費用一六四万〇四〇一円及び相続財産管理費用三〇一万一六二〇円の合計四六五万二〇二一円の内金一一六万三〇〇五円

なお、右(三)記載の貸付金額は、当初申告貸付金額に1記載の申告定期預金の額に相当する代位弁済金額を加算したものと認められる。

7  原告は、平成五年三月二三日付けで、東洋エステートに対し、本件調停で原告が分割により取得した貸付金に係る部分につき、相続を原因とする名義変更の依頼をし、同日付けで、右貸付金のうち三四九九万四三八八円の放棄に係る貸付債権証書を東洋エステートに交付するとともに、東洋エステートから右貸付金の弁済金として額面一〇〇万円の小切手を受領した。(甲第一号証)

8  原告は、平成五年五月二六日、本件調停で原告が分割により取得した相続財産の実質的受領額が全体の二五パーセント(法定相続分)ではなく、一〇パーセント相当であるとして、更正の請求(以下「本件更正請求」という。)を行った。これに対し、被告は、原告に対し、同年九月七日付けで、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行った(以下「本件通知処分」という。)。

9  原告は、被告に対し、平成五年一〇月一九日付けで、本件通知処分について、異議申立てを行い、被告は平成六年一月一七日付けで右異議申立てを棄却したところ、原告は、同年二月一六日、国税不服審判所長に対し審査請求を行い、国税不服審判所長は、平成七年九月一九日付けで右審査請求を棄却したため、原告は、同年一二月一五日、本件訴えを提起した。(甲第一号証、第六ないし第八号証、第九号証の一ないし六)

第四争点及び当事者の主張

一  本件の争点は、本件更正請求が、法三二条一号又は通則法二三条一項一号による適法な更正の請求と認められるか否かである。

二  当事者の主張

1  被告の主張

本件更正請求を通則法二三条一項の規定に基づく更正の請求だとすると、本件更正請求は、同条項に基づく更正の請求をすることができる期限(平成二年一〇月一七日)を二年七か月余りも経過した後に提出されたものであり、また、本件調停成立から二か月以上経過した後に提出されたものであって、通則法二三条一項及び二項所定の更正の請求を行うことができる期間内になされたものということはできない。

また、法三二条一号の規定は、同号所定の事由が生じた前後を通じて課税価格の総額及び相続税の総額に変動がないことを前提として相続固有の後発的な事由に基づいて納税者の課税価格が減少し、その結果納付すべき税額が減少した場合に、各相続人等の負担すべき相続税額を是正するための措置である。原告は本件調停の成立により、前記第三のとおりの財産を取得し、その課税価格額は五四三二万八四五一円であり(相続税の課税価格の計算上控除する金額は、相続財産管理費用を除く金額であるから、前記6(五)記載の原告負担額中葬式費用に相当する金額を後記計算式のとおり四一万〇一〇〇円と算出した。)、第一次更正請求により、原告の本件修正申告額を減額した本件更正に係る課税価格は四八二二万二〇六四円であるから、原告が未分割状態で取得した遺産は、本件調停により取得した遺産総額の範囲内となり、課税価格及び相続税額のいずれも過大となっていないから、右更正の請求の要件を充たしていない。

(計算式)

1,640,401×1,163,005/4,652,021=410,100

2  原告の主張

原告の本件更正請求は適法に受理されており、また、納税者が更正請求することが可能か否かに関わりなく、税務所長は、通則法二四条の規定により、更正する権限を有している。葛飾税務署係官である松尾上席が、平成元年一一月一七日ころ、原告に対し、課税価格に関する異議は遺産分割終了後に申立てをするようにと指導し、国税不服審判所における審査でも原告の更正請求権について争われたことはなかったのも右税務署長の更正権限を念頭においてのものである。それにもかかわらず、本件訴訟において、原告の本件更正請求の可否を争うのは妥当ではない。

原告が本件調停で分割により取得した財産のうち、東洋エステートに対する貸付金は、本来的な相続財産ではなく、その実質的な原資となった申告定期預金が本来的な相続財産であった。そして、本件被相続人は、申告定期預金につき東洋エステートの債務担保のため質権を設定しており、右質権の被担保債権額については、実質的にみて本件被相続人の保証債務が存在したのと同視でき、また、当時、東洋エステートは弁済不能の状態にあり、物上保証人である本件被相続人が保証債務を履行しなければならず、かつ主たる債務者である東洋エステートに対して求償して返還を受ける見込みがない場合であったから、右質権の被担保債務は、法一三、一四条により相続財産から控除すべき相続債務と解すべきである。

以上によれば、原告が、本件調停で分割により取得した財産のうち東洋エステートに対する貸付金の実質的価値は回収可能な一〇〇万円であったというべきである。したがって、原告が本件調停で分割により取得した財産に係る課税価格は一九五三万八二〇九円となり、本件更正に係る課税金額四八二二万四〇六四円は右より過大となる。

三  証拠

本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。

第五争点に関する判断

一  本件更正が通則法二三条一項の規定に基づく更正請求といえるか否かについて

本件更正請求を通則法二三条一項の規定に基づく更正の請求だとすると、本件更正請求は、同条項に基づく更正の請求をすることができる期限(平成二年一〇月一七日)を経過した後に提出された不適法なものというべきである。また、同条二項の規定に基づく更正の請求だとする主張はなく、仮に同条項の適用を求めるとしても、本件更正請求は、同条項に基づく更正の請求をすることができる期限(平成五年五月四日)を経過した後に提出されており、不適法なものというべきである。

二  本件更正請求が法三二条一号の規定に基づく適法な更正の請求といえるか否かについて

1  法の趣旨

法五五条は、相続固有の問題として、相続税の法定申告期限内に遺産の全部又は一部の分割ができないことがあり得ることに鑑み、法定申告期限内に申告書を提出する場合において、相続人間で遺産が分割されていないときは、その未分割の遺産については、各共同相続人が法定相続分の割合に従って、当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算することとしている。これは、長期にわたって遺産分割を行わないことにより、いまだ現実に相続により取得する財産が確定していないことを理由に、相続税の納付義務を免れるといった不都合を防止するための措置であるばかりでなく、国家の財源を迅速、確実に確保するという国家的要請に基づくものでもある。

一方、法三二条各号列記以外の部分は、同条各号のいずれかに該当する事由により納付すべき税額が過大となったときには、その分割が行われたことを知った日の翌日から四か月以内に限り、通則法二三条一項の規定による更正の請求をすることができるとし、法三二条一号は、法定申告期限経過後に当該未分割財産の分割が行われ、共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったとの事由を掲げている。これによれば、右更正の請求は所定事由に該当した場合に限って認められるものであり、法三二条一号の事由は、未分割の遺産につき、いったん法五五条の規定による計算で税額が確定した後、遺産の分割が行われ、その結果、既に確定した相続税額が過大になるという相続税に固有の後発的事由について規定したものであって、右規定に基づく更正の請求は、当初の申告に存在するとされる過誤の是正を求めることを目的とするものではない。とすれば、未分割の遺産を分割した結果、既に確定した課税価格及び相続税額が過大になるか否かの判断に当って、算定の基礎となる遺産の価額は、申告(その後に更正があった場合にはその更正。)により確定した価額を基礎とすべきである。

そして、確定した遺産の価額をもとに算出した分割遺産に係る課税価格及び相続税額と比較して、既に確定した課税価格及び相続税額が過大とならない場合には、法三二条各号列記以外の部分及び同条一号の規定による更正の請求の事由に該当しないものであって、当該更正の請求は不適法というべきである。

2  これを本件についてみるに、原告が本件調停で法定相続分より少ない割合の分割を受けた事実は認めるに足りない。さらに、本件調停で原告が取得した財産に係る課税価格は、前記第三、二、6(一)ないし(三)記載の積極財産の価額から同(四)記載の相続債務及び同(五)記載の葬式費用(前記第四、二、1の被告の計算のとおり四一万〇一〇〇円をもって、原告の相続税の課税価格の計算上控除すべき金額と認めるのが相当である。)を控除した五四三二万八〇〇〇円(通則法一一八条一項)であり、第一次更正請求により、原告の本件修正申告額を減額した本件更正に係る課税価格は四八二二万二〇六四円であるから、原告が未分割状態で取得した遺産は、本件調停で分割により取得した財産に係る課税価格の範囲内となり、課税価格及び相続税額のいずれも過大となっていない。

したがって、本件更正請求を法三二条一項の規定に基づく更正の請求と解することはできないというべきである。

3  これに対し、原告は、原告が本件調停で分割により取得した財産のうち東洋エステートに対する貸付金の実質的価値は回収可能な一〇〇万円であると主張するほか、東洋エステートに対する貸付金は、本来的な相続財産ではなく、本件被相続人が東洋エステートのために質権を設定していた申告定期預金を、本件被相続人の死亡後に、本件共同相続人らの協議によって、右質権の被担保債権の弁済に充てたことによって東洋エステートに対して発生した求償権の性質を有するものであるところ、右申告定期預金については、右質権の被担保債権額分は、実質的にみて本件被相続人の保証債務が存在しているのと同視でき、かつ本件被相続人の死亡当時、東洋エステートは弁済不能の状態にあり、物上保証人である本件被相続人が保証債務を履行しなければならず、かつ主たる債務者である東洋エステートに対して求償して返還を受ける見込みがない場合であって、右質権の被担保債権額は、法一三、一四条により相続財産から控除すべき相続債務と解するべきであるから、東洋エステートに対する求償権の意義を有する貸付金は、相続財産として考慮されるべきものではなく、相続財産を右の範囲と捉えると、原告が本件調停で分割により取得した財産に係る課税価格が本件更正に係る課税価格より過大となると主張する。

しかしながら、原告の主張は、いずれも、当初の申告に過誤があったとして、その是正が行われることを前提にすれば、原告が本件調停で分割により取得した財産に係る課税価格が本件更正に係る課税価格より過大となると主張するものであって、遺産分割により取得した財産を基礎として算出した課税価格及び相続税額を確定することを目的とし、納税申告自体の過誤の是正を目的としていない法三二条一号の更正の請求の事由とはならないというべきである。

また、原告は、被告が更正権限を有することから、本件更正請求に応ずべき旨の主張をするが、被告が更正の権限を有すること(通則法二四条)から、法三二条に規定する更正の事由が肯定されるものではない。

三  本件各通知処分の適法性

以上によれば、本件更正請求は、前記一及び二記載のとおり、不適法なものであるから、本件更正請求に対し、更正すべき理由がない旨の通知をした本件通知処分は適法というべきである。

第六結論

以上によれば、原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 富越和厚 裁判官 團藤丈士 裁判官 水谷里枝子)

別表

本件通知処分に至る経緯

〈省略〉

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